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2011年1月11日 (火)

「歌うクジラ」 村上龍

図書券の使用期限が2010年で切れるとのことで、年末に机の引き出しを捜したら2000円分が出てきました。
期限切れ後は換金してもらえるとのことで、現金になれば本以外にも使えるのでそれはそれでいいのですが、換金方法がまだ発表されていないのと手続きが面倒くさそうなので本を買うことにしました。
一緒に出てきた文具券も使える店が少ないこと。

業界としては換金されると本以外にお金が流れるし、図書券の送料やお金の振込み手数料とかが大きな出費になるので、わざと換金方法の発表を遅らせ尚且つ、手続きを面倒にして換金する人を減らそうとしているように勘ぐってしまいます。

閑話休題。

その図書券で村上龍の「歌うクジラ」を買いました。
この小説は「群像」に連載された後、出版社を通さずに電子書籍として発売されました。村上龍もやるなと思いましたが、iPadを持っていない私としては読むことができず紙になるのを待っていました。
電子書籍では1500円ですが、紙出版となると上下巻あわせて3200円と割高です。iPadでページをめくると坂本龍一のBGMも流れるという凝った内容で1500円はお買い得ですね。
iPadが欲しい~~~

紙では上下巻を並べるとクジラの絵ができるという作りになっています。

Cimg2423

村上龍の作品と言うと、もう35年も前の芥川賞作品「限りなく透明に近いブルー」以来読んでいません。その時には爽やかそうな題名とは裏腹に、ドラッグとセックスを描いた重たい作品の何処が芥川賞なんだろうと理解ができませんでした。

今回の作品は近未来SFといった私好みのストーリーで、期待して読み始めましたが、途中から登場人物がわざと助詞を間違えて会話をするというくだりになり、頭の中で正しい助詞に直して会話を成り立たせなくてはならず、慣れるまでは非常に読みづらい文章でした。
それでなくても、句点で区切られた文章を読点で区切ったほうが解かりやすいと思う所もあるのに。
暴力などの血なまぐさいシーンの描写も村上龍らしく細かいのですが、時にはしつこいと思えます。

さて、この作品の中に出てくる宇宙エレベータと宇宙ステーション。現代でも研究がかなり進んでいて、近未来に実現していてもおかしくない代物ですが、作品中の物は専門家から見るとかなり無理な設定が多いようです。
例えば、宇宙エレベータの周回速度と宇宙ステーションの周回速度の関係上乗り移ることが出来ないなど。
下記のブログで検証がされています。http://blog.goo.ne.jp/orbitalelevator/e/ee54e240dcd1f51de312a82276abbdee

こんなことばかり書いていると「歌うクジラ」は面白くないのではと思わせてしまいますが、そんなことはありません。それを差し引いても意味のある作品です。
今の政治、経済、科学を未来に延長して行くとこんな風になってもおかしくはないという、有り得そうな未来が描かれていて、村上龍からの問題提起がずっしりと圧し掛かってくるように思えます。
欲を言えば、日本国内だけではなくその時の世界の情勢も描いてくれたら良かったのですが。

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