小野不由美「屍鬼」読了
友人から借りたというより、借りたかった本と一緒に入っていたと言う方が正しい「屍鬼」の文庫本5巻。
借りたかった本は全4巻なのに、それよりも厚いのが5冊も入っていたということはよっぽど読ませたかったのかと思いながらページを捲り始めました。
この「屍鬼」は15年以上も前の作品でアニメ化もされているようですが、私は作者も作品も全く知りませんでした。
読み始めは探偵物か推理小説かと思いながら読み進めていましたが、1巻を読み終わった時点ではまだ事件のさわり程度で物語が進展せず、そうなると読む方もなかなか進まず、合間に他の本を読んでそれが読み終わってしまうといった具合でした。
でも借りた本を返すにあたっては感想を聞かれることは必須なのでちびちびと読み進めることに。
2巻目になるとこれは推理ものではなく、よくある未知のウィルスのホラーものかと思わせる展開になってきます。
通常のホラー物の第一章分がやっと読み終わった感じです。
3巻目に入り事件だけは沢山起こり、登場人物もやけに多くなります。
まして小さな村が舞台のため、登場人物も村内の親戚関係が多く苗字が一緒のため人間関係が混乱してきます。
そしてやっとこの小説はゾンビまたは吸血鬼系のホラーものだ気づかされました。
この時点で15年前の作品という意識がないので、ここまで読んでいまさらゾンビかと、少し興味を削がれました。しかし、
4巻目では敵の正体も判り、人間対化け物の対決かと思いきや人間側の結束も無いまま、えっ?この人も、この人もと言うように人間側の要になるだろうと思っていた人物が予想に反して襲われてしまいます。
一方、化け物と言っても元は人間で、人間であった頃の記憶ははっきり残っていて、その上で家族や知り合いを襲わなくては生きていけないという苦悩が描かれ始め、ただのホラーから、生物の命を奪って生きている人間を含む地球上の生物の在り方を問うような哲学的な内容も見え隠れし出します。
ただの恐怖だけを題材にしたホラーではなく、逃げようもない人間の性が恐怖に重なってきます。
このあたりまで来ると、1巻目で感じた読む苦痛は何だったのかと思う位に先に読み進みたくなります。
そして、最終5巻目いよいよと思った矢崎に人間側の主人公まで襲われてしまい、どうなっちゃうの?という展開
この先は書かないことにします。
小説の印象が二転三転し、読み終わると事件は解決したにもかかわらず恐怖というよりも悲しさが残って、重いホラーだなという感じがしました。
友人はきっとこの感覚を味あわせたかったのかも知れません。
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