筒井康隆「モナドの領域」読了
日本3大SF作家(小松左京、星新一、筒井康隆)と呼ばれる3人で唯一生存している筒井康隆の作品。
小松左京は本格的SF、星新一はショートショート、筒井康隆はドタバタSFという印象を持っています。
私は、小松、筒井両作家のファンで、文庫本は全て集めました。(筒井康隆は絶筆宣言前まで)
筒井康隆が絶筆宣言後、絶筆宣言に反対だったわけではありませんが、新しい作品は全く読んでいません。
そんな中、「わが最高傑作にして、おそらく最後の長編」の肩書で「モナドの領域」が発刊されては読まないわけにはいきません。
ドタバタSFでは無いという情報もあり、それなりに本格的かと期待して読み始めました。
確かに、序盤は殺人事件を思わせる推理小説風に始まりましたが、中盤になると神、いや神をも超越した{GOD}なる人物?が登場し、とてつもない知識と予言のようなことを行いますが、この「GOD」が人間の法廷で被告として裁判にかけられるあたりはドタバタっぽいと思いながらもドタバタではないんだと自分に言い聞かせながら読み進みました。
この「GOD」が法廷で歴史上の哲学者を君呼びで解説しますが、哲学は良く分からない私にとってはちょっと理解し難い領域でした。
結局、作家の書いた作品もパラレルワールドの一つで、作家はその作品の中では神をも超越した「GOD」であり、全ての登場人物や世界の過去から未来までを把握していて、それを殺すも、破壊するもすべて美しい結果だと言いたいのだと思います。
作者が作品の中に登場して、その物語の設定について裁判ざたになるという視点は面白いのですが。
作品の中の登場人物の名前などはパロディぽくて楽しめたのですが、作品中に作者の過去の有名作品「時をかける少女」の中の一文が出てくる部分で、その文は「時をかける少女」の物だと解説してしまっているところはいただけません。
やはりここは読者に(大ファン)に気づかせるべきで、気づいた読者は「ニヤ」として、自分が気づいたことに満足するのではないでしょうか。
読み終わってみると、序盤の殺人事件はどうなってしまったんでしょうか?
これが、「わが最高傑作にして、おそらく最後の長編」?
いやいやそれは無いでしょう?とても筒井康隆の最高傑作とは思えません。
ことによったら、そこがパロディか?
次の作品に期待します。
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