書籍・雑誌

2016年12月20日 (火)

村田沙耶香著「コンビニ人間」読了

次の芥川賞の候補がノミネートされた今頃になって「コンビニ人間」を読み終わりました。
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ページ数も少なく読もうと思えば1~2時間で読み終えてしまうのですが、この本を買った時に私は別の本を読んでおり、先に妻が読みたいと言って読み始めたのはいいのですがちっとも読み終わらず、結局私が横取して先に読了しました。

芥川賞受賞からだいぶ経ってしまったので、作品を読む前に作者のプロフィール情報などが沢山入ってきてしまいました。
作者自身が週3回コンビニでバイトをしていたり、作家仲間から「クレージー沙耶香」とよばれていたり、ラジオやテレビのインタビューの内容などで、自分の中で「コンビニ人間」の主人公はどんな異常な人間なんだろうと想像が膨らんでしまいました。

さて、本を手に取ってみると比較的薄く、芥川賞らしくない文章で分かりやすい内容でした。
主人公の古倉恵子は想像していたよりは異常ではなく、普通よりも喜怒哀楽が無くて、考えがちょっと短絡的程度。
普通の人間社会で生きてゆくためのマニュアルが必要で、まさにコンビニ的マニュアルが無いと変人扱いさてれしまうというような人物。
私が想像していたより異常では無いと感じたのは、自分が主人公に似て喜怒哀楽が少ないからなのでしょうか?
作品の中で主人公が怒りを感じたことが無いということが描いてありましたが、そういえば自分も今まで怒りを表面に出しすほど怒ったことが数える程しか無く、家族、親族が亡くなっても泣いたことが無く、嬉しいことがあっても嬉しさをうまく表現できなく、嬉しくないの?と言われたこともたびたび。
主人公とちょっと似ていて共感を覚えました。
コンビニ店員である主人公から見た他の店員とお客の、”あるある”という鋭い描写が面白いです。

作者の他の作品も異常な世界が描かれているようなので読んでみたいですね。

2016年11月24日 (木)

「ハリーポッターと呪いの子」読了

JKローリング 「ハリーポッターと呪いの子」を読み終わりました。

発売日の11月11日に都内への出張の帰り、東京駅構内の本屋さんに山積みされていたので思わず購入してしまいました。

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本屋さんでブックカバーを付けますかと聞かれたので、お願いしたところ、読み終わってから気づいたのですが、ハリーポッター専用のブックカバーでした。
通常、読み終わって本棚に収納するときにはブックカバーをはずすのですが、この本だけははずさずに並べました。

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今度の物語は前回の19年後。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、マルフォイ、そしてあの人の子供たちが主役です。

期待してページをめくると、今までと違う。
そう、舞台の台本のようにセリフとト書きの記述が続きます。それも最後まで。
最初の内は非常に読みづらい感じでした。

ネタバレするので詳しい内容は書きませんが、全体的に不満感が残りました。
描写があくまでも舞台なので、広い世界観が無く狭い感じがしてしまいます。
今回の本は出版しなかった方が良かったのでは?





2016年3月28日 (月)

筒井康隆「モナドの領域」読了

日本3大SF作家(小松左京、星新一、筒井康隆)と呼ばれる3人で唯一生存している筒井康隆の作品。

小松左京は本格的SF、星新一はショートショート、筒井康隆はドタバタSFという印象を持っています。
私は、小松、筒井両作家のファンで、文庫本は全て集めました。(筒井康隆は絶筆宣言前まで)
筒井康隆が絶筆宣言後、絶筆宣言に反対だったわけではありませんが、新しい作品は全く読んでいません。
そんな中、「わが最高傑作にして、おそらく最後の長編」の肩書で「モナドの領域」が発刊されては読まないわけにはいきません。
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ドタバタSFでは無いという情報もあり、それなりに本格的かと期待して読み始めました。
確かに、序盤は殺人事件を思わせる推理小説風に始まりましたが、中盤になると神、いや神をも超越した{GOD}なる人物?が登場し、とてつもない知識と予言のようなことを行いますが、この「GOD」が人間の法廷で被告として裁判にかけられるあたりはドタバタっぽいと思いながらもドタバタではないんだと自分に言い聞かせながら読み進みました。
 この「GOD」が法廷で歴史上の哲学者を君呼びで解説しますが、哲学は良く分からない私にとってはちょっと理解し難い領域でした。
 結局、作家の書いた作品もパラレルワールドの一つで、作家はその作品の中では神をも超越した「GOD」であり、全ての登場人物や世界の過去から未来までを把握していて、それを殺すも、破壊するもすべて美しい結果だと言いたいのだと思います。
作者が作品の中に登場して、その物語の設定について裁判ざたになるという視点は面白いのですが。
 作品の中の登場人物の名前などはパロディぽくて楽しめたのですが、作品中に作者の過去の有名作品「時をかける少女」の中の一文が出てくる部分で、その文は「時をかける少女」の物だと解説してしまっているところはいただけません。
やはりここは読者に(大ファン)に気づかせるべきで、気づいた読者は「ニヤ」として、自分が気づいたことに満足するのではないでしょうか。

読み終わってみると、序盤の殺人事件はどうなってしまったんでしょうか?

これが、「わが最高傑作にして、おそらく最後の長編」?
いやいやそれは無いでしょう?とても筒井康隆の最高傑作とは思えません。
ことによったら、そこがパロディか?

次の作品に期待します。

2015年11月10日 (火)

「わたしちゃん」石井睦美

ブログをサボっていたため、ひと月ほど前の話になってしまいますが、
石井睦美さんの「わたしちゃん」が第26回ひろすけ童話賞を受賞しました。
といっても私は「わたしちゃん」を読んではいませんが。

日本の童話作家の草分け濱田廣介さん。

ひとりっこだった私は、家の中では遊ぶ人がいないためよく本を読んでいました。
私が小学校低学年の頃だったと思います、両親が「ひろすけ童話全集」を買ってくれました。
今でも実家に保管してあります。
タイトルしか思い出せないのですが「竜の目のなみだ」という作品が印象に残っています。
童話は沢山読んでいると思いますが、日本の童話というと「ひろすけ」しか思い出せません。

石井睦美さんがその「ひろすけ童話賞」を受賞してしまうなんて他人事ながら感激です。

おめでとう!睦美さん。

2015年3月17日 (火)

宮部みゆき「荒神」読了

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宮部みゆきさんの「荒神」を読み終わりました。

今、上映されている「ソロモンの偽証」が面白かったのでこれもと思い手に取りました。
この小説は朝日新聞に連載されていたもので、我が家の新聞も朝日新聞なので毎日読んでいれば買わなくてもすんだ気もしますが、一気読みしたい私としては毎日毎日少しずつではじらされているようで我慢できないのです。

今回の物語の舞台は江戸時代の東北の山村。
この山村を壊滅する怪物が、現代の原子力発電所のことなのかとも読め、多くの登場人物の運命の糸が一つに纏まって行くまでは引き込まれますが、終盤になり怪物の正体が判り退治する場面は漫画の怪獣退治のようで後味がちょっと残念でした。
佳作。

2015年2月19日 (木)

「三匹おっさん」読了

有川浩著「三匹のおっさん」を読了しました。
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ちょうど1年位前にテレビ東京でドラマ化され放映されていました。
その時には本の内容も知らなかったので視聴しませんでした。
ちょうどその頃にこの本を頂いたのですが、積読のままで1年も経ってしまいました。
本と一緒に番組を録画したDVDまで付けて貰ったのに。

定年退職した主人公の幼馴染み3人が町内パトロールをして悪者を退治するというストーリーです。
読み始めるまではよくありそうなストーリーであまり期待はしていなかったのですが、読み進むと悪者退治が痛快で嵌りました。

6章に分かれていて各章ごとに1つの事件が発生します。
登場人物の家庭も、いかにもありそうな家族関係で共感してしまいます。

読み終わってから続けてDVDも観てしまいました。
三匹のおっさん役は北大路欣也、泉谷しげる、滋賀廣太郎。
ドラマも単純に面白いです。

本のほうも続編「三匹のおっさん ふたたび」が発刊されていますが、ドラマも視聴率が良かったのでしょう、4月から「三匹のおっさん2」も放送されるそうです。

私もあと2年で定年となります。
この3匹のように「じじぃ」ではなく「おっさん」と呼ばれるようになりたいものです。

ところで、作者の有川浩って「ひろし」ではなく「ひろ」と読む女性なんですよ。
この作品の他に「図書館戦争」や「県庁おもてなし課」「阪急電車」も代表作です。
私が頂いた文庫本は文春文庫版ですが、その後版権が移って新潮社版もでているそうです。
と、いうことは文春文庫版は在庫かぎりで絶版。
貴重な1冊になるかな?

2014年6月30日 (月)

カモメのジョナサン完成版読了

40年前にブームとなったリチャード・バック著の「カモメのジョナサン」に第4章が存在していて、このたび五木寛之氏の創訳で完成版として発刊されました。Img_2726

40年前といえば私は高校生。
そんな私でも読んだのですから大ヒットだったんです。
餌を採るために飛ぶカモメの群れの中で、ただ一匹ジョナサンは高度な飛行技術の会得を目標に仲間外れになりながらも練習、研究し目標を達成するということが共感を得たのでしょうか。
今、読み返してアップルの創始者故スティーブ・ジョブス氏を想像しました。

そこで、当時読んだ本と比較してみようと実家の本棚を探すとありました。
が、なんと原語の英語版。
付録として、飛行に関する専門用語や慣用句の訳解説が付いています。

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記憶としては完全に読んだという気がしていましたが、当時、そして今の私の英語の実力からしてそれは考えられません。
高校の頃の友人もそれには太鼓判を押すでしょう。
きっと、解説本を読んでその気になっていたんですね。
ジョナサンのように目標を掲げたことは事実のようですが。

さて、完成版の第4章は、ジョナサンが神格化されてしまい誰もジョナサンのように限界に挑まないという現代を皮肉ったような内容。
リチャード・バックは40年前にこの世相を予測していたということでしょうか?

2014年2月 3日 (月)

石井睦美「愛しい人にさよならを言う」読了

石井睦美さんの作品「愛しい人にさよならを言う」です。
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私の好んで読むカテゴリーではありませんが、彼女のファンとしては絵本以外の作品は良くても悪くてもとりあえず買うわけです。
今回の作品は彼女の娘さんも今までで一番良いと言っているようですが私も同感です。

シングルマザーに育てられた”いつか”が回りの人たちの愛情によって成長してゆく様子が
”いつか”の回想という形で綴られてゆきます。
その過程で切ない別れや出会いがあるのですが、このあたりは前著 四方田犬彦さんとの共著「再会と別離」もヒントになっているのかも知れません。
全体として童話作家らしくほんわかとしたストーリーとなっていますが最後は賛否両論。
私は”いつか”の母 槇が言った「たいがいの人はいいひとよ」という言葉が印象に残りました。

2013年11月13日 (水)

藤野可織「おはなしして子ちゃん」読了

「爪と目」で2013年の芥川賞を受賞された藤野可織さんの受賞後1作目の作品
タイトルの「おはなしして子ちゃん」を含み短編10作からなる作品です。

「爪と目」は読んでいないのですが、アマゾンのレビューをみると皆さんの酷評が多いので、本やさんでどうかなと思いながら最初の方を読んでみると、芥川賞作家とは思えないけれども引き込まれる面白さがあり買ってみました。

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全編ともホラー、SFというよりも、”世にも不思議な物語”の小説版のような印象です。
「逃げろ」、や「ホームパーティーはこれから」なんては筒井康隆のドタバタSFに似た作品ですが、全体的には筒井作品よりもリアルな残酷さがあります。
「爪と目」でも残酷さがあるようなので作者はSなのでしょうか。

芥川賞作家だ、純文学だって拘るよりも物語として不思議で面白い作品です。
お薦めです。


2013年10月29日 (火)

四方田犬彦/石井睦美「再会と別離」読了

久しぶりに石井睦美さんの本を読みました。

最近の彼女の童話は小学校の国語の教科書にも採用されているようで、童話作家としての地位は確立していますが、小説家としての知名度はまだかな?

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この本は小説ではなく23年前に編集者と作家として出会った二人が、再会したことをきっかけに「再会と別離」というテーマでそれぞれの歩んできた人生を手紙という形でやりとりするというもの。
最初からこのやり取りを出版する前提なので、石井さんはやはり本には書けないことが隠れていますが、四方田氏は提案したときから覚悟があったのか本音の部分がかなりあります。

四方田氏のことは良く知らないので、そうなのか~程度の感想ですが、石井さんは昔の思い出もあり童話作家として順風満帆だったのかと思っていたら、いろいろと波乱もあったようで、本人や母親の話とかでは昔の頃の顔も浮かんで来たりしてして、四方田氏のものとは別の感慨がありました。

知らない作家同士の手紙のやり取りであるならば、買って読むほど本としては興味を引く内容ではなかった気がします。(ちょっときつい感想かな)